海外視察

アメリカ流通業最前線7日間の旅−小売サービス業はどう変わるか?

企画 兵庫県中小企業家同友会

訪問先レポート

世界最大のSC モール・オブ・アメリカ(ミネアポリス)

とにかくでかい。なにせイギリスから飛行機で買物ツアーが企画されている程です。商圏もカナダを含む六州にわたっています。野球場の跡地31万uという広大な敷地に、4つのデパートと約580の専門店を集めた4階建てのクローズド(屋内型)モールで、その中心には、8500坪のテーマパーク(簡単に言えば遊園地!)ナッツ・キャンプ・スヌーピーがあります。

■ 明確なストアコンセプトとビジュアルプレゼンテーション

注意して各店舗を見ると、どんなコンセプトでどんな商品を提供しようとしているのか、店頭のディスプレイだけでもすぐに判る店が多いことに気づきます。例えば雑貨関係では、“鳥”をキーワードに時計・置物・トレーナー・鳥かご・ポストカードなどをあふれるように品揃えした「Wild Bird」。玩具では、列車をキーワードに汽車や電車の様々なおもちゃを販売する「Great Train Store」(店内では、蒸気機関車が汽笛をあげて走っている)などです。
考えてみれば、600近い店舗の中から顧客に選んでもらうためには、顧客のどんな要望にどう応えるのかはっきりしない店では生き残れません。 
もう一つ重要なのは、そのコンセプトが顧客ニーズにマッチしていること及びそれが明確に顧客に伝わっていることです。いくら店のコンセプトが文章化されていようとも、それが、店頭、品揃え、社員の対応などからビジュアルに顧客に伝わらない限り、それは絵に描いた餅にすぎません。
ビジュアルプレゼンテーションの面で、非常に優れた店舗が多いことを感じました。

■ 「ノードストローム」買物体験記

日本でノードストロームの名が有名になったのは、トム・ピータースがベストセラーになった著書「経営革命」において、「無上のサービスが規範となっている実例」として紹介してからですが、その後、「ノードストロームウェイ」「サービスが伝説になる時」など、ノードストロームの元社員が書いた本が日本でもベストセラーになり、「ノードストロームでは売っていないタイヤでも返品を受け付けた」など理想的な顧客サービスの店として流通業界では羨望の的となっています。

靴を買ってみることにしました。1階メインフロアーにかなり広い面積で、女性用・男性用の靴売り場があります。日本のデパートの場合、1階に紳士用靴売り場があることはあまり無いので、それだけでノードストロームの靴に対する自信の程を感じさせます。

と言うのも、ノードストロームはもともと、スウェーデンからアラスカに金鉱探しに来て失敗したジョン・W・ノードストロームが、1901年にシアトルのダウンタウンに小さな靴店を開いたのが発祥です。だから、靴の品質と品揃えは素晴らしいと聞いていたし、実際現地の方に聞いてみても、靴を買うならノードストロームという声が返ってきました。(※注1)

広い靴売り場をウロウロしていると、ハンサムでパリッとした男性社員に声をかけられたので、「I'm looking for business shoes」と答えると、椅子(日本のデパートにありがちな背もたれのないようなものでなく、ソファーに近い)に案内されました。彼はまず、簡単な測定器で私の右足の大きさ(長さと幅)を測った後、「黒色を希望ですか」と聞き、すぐにバックヤードから2足持って来て、試足(?)させました。(そのやり方もとてもスマートであった) その内の一足が、アメリカ製でとてもいい靴だと言うし、気にいったので、値段をみるとなんと235$!「これは予算オーバーなので、150$以下の物が欲しい」と言うと、彼はいやな顔ひとつせず今度は3足用意してきました。本当に納得いかないと買わない気でいた私は、「どちらかと言うとこれだが、もう少し違ったタイプは無いか」と聞くともう1足持ってきました。履いてみて気にいったので買うことにしましたが、なんと、やはり(?)その靴はイタリア製でした。帰り際、せっかくだから彼と一枚写真を撮っておこうと店に戻ると、彼はすでに常連客風の人と話していました。

 しかし、地元の方と話して見ると日本で言われているほど、ノードストロームの評価は高くはありませんでした。「たしかに店員の対応は大変いいが、返品制度などはアメリカの百貨店はどこでもやっている」「高級品は専門店で、日用品はディスカウントストアで買います」
 そう、トム・ピータースが言う通り「超優良企業は存在しない」のです。「サービスが伝説になる時」の著者で元副社長のベッツィ・サンダースも「もし、わたしどもの店が世間の評判どおりの立派なお店でしたら、ほかのショッピングセンターはいらないわけで、ノードストロームだけということになるじゃありませんか!」と言っています。

しかし、このことがノードストロームの評価を下げることを意味するものではありません。

既存のデパートが忘れかけていた小売業の本質である「顧客が最良と考える買物体験」を、顧客一人ひとりに提供するという経営理念を、一切の妥協なくして遂行しつづけていることにノードストロームの強さがあるのです。

■ 行政と一体となった地元活性化策

ダウンタウン(中心市街)の商店街ニコレットモールについても触れておきたいと思います。
ミネアポリスでは、ダウンタウンの活性化のため、商業者と行政でミネアポリス・ダウンタウン協議会を結成しています。

「モール・オブ・アメリカ」が進出するに際して、有力な核店舗や駐車場を作るなどの活性化策を実施すると共に、若者が多く集まらなければ街は活性化しないと判断し、人気のある魅力的な店舗を誘置しました。日曜日には露店を許可して街の賑わいを盛り上げています。

これら行政と中小商業者が一体となったハード&ソフト策により、来街者は一挙に増え、活性化しています。

近隣型SCの最新事情

規模の大きさや施設の充実ぶりから、大型ショッピングセンター(RSC)が注目されがちですが、アメリカ全体のSCの90%近くが食品スーパーマーケット(SM)を核店舗にした地域密着の近隣型ショッピングセンター(NSC)です。

現在のアメリカ人が時間に追われて忙しいという状況を反映して、いちいち遠いRSCまで買物に行きたくない、NSCでショッピングとサービスを済ませたいという顧客ニーズが高まっています。

そのため、SM自体がドラッグストアやベーカリー、また銀行等を店内に取り込み、ライフサポートをするための業態になりつつあります。

また、有力テナントもNSCへ出店を始めており、これまでの「生活をサポートする機能」にプラスして「生活に彩りを与えていくような機能」をもった地域の核としてのSCに変化してきています。

※注1 ノードストロームの靴売場を、顧客の購買行動心理に裏づけされた「科学的販売戦略」の視点から見ることも重要である(参考文献「アメリカの小売業」角田正博著)

■ ウッドベリーコモン

ニューヨークのマンハッタンを走り抜け、ジョージ・ワシントンブリッジを渡り、17号線を北上して約1時間、セントラル・ヒル(峡谷)の中に忽然と現れるのが、アメリカでも最も有名なアウトレットモール、ウッドベリーコモンです。

 アウトレットとは、“はけ口”の意味で、メーカーや卸・小売業者が自社商品の処分のために設立した小売業態のことで、もともとはメーカーが過剰在庫品等を低価格で販売した(ファクトリー・アウトレットストア)のが始まりですが、百貨店や専門店などが売れ残り品を処分する店(リテール・アウトレットストア)を展開することで成長に弾みがつきました。こうしたアウトレットストアが集積したものがアウトレットモールであり、全米に500カ所以上あると言われています。

 その中でもウッドベリーコモンが有名な理由は、多くのアウトレットストアがRSC(大型ショッピングセンター)の専門店の商品を低価格で販売しているのに対して、近くにニューヨークがあることから、有名な専門店やDCブランドの店舗が数多く出店しているためです。ダナ・キャランを始め、ラルフローレン、ベルサーチなどの他、グッチやナイキも最近出店しています。商圏範囲は周囲100マイル(160km)で年間100万人の顧客を集めるのも納得がいきます。

 私は、女性用のバッグを買うことにして何店か廻った末、オフフィフス(ニューヨークの高級店サックスフィフスアベニューのアウトレットストア)で、フェラガモ(またもイタリア製)のバッグを見つけました。$385が$235でした。

スーパーマーケット事情

今回実はスーパーマーケット(以下SM)の視察は予定にはありませんでした。ところが、ワシントンでホワイトハウスとペンタゴンに入れなかったことが幸い(?)して、生活階層別の3店を見ることができました。

日本人は、アメリカ人の買物と言うと、大きなカート一杯に野菜や肉、乳製品などを1週間分ぐらい買って、これまた大きな冷蔵庫に保存していると思っているが、これは大きな間違いです。今アメリカ人の食生活は大きく変わりつつあります。その中でHMR(ホームミールリプレースメント)に絞って感想を述べておきたいと思います。

■ HMRって何?

では、何が変わったのでしょうか? ひとことで言えば、今までのSMは冷蔵庫に詰めるものだけを売っていましたが、これからは食卓を彩っていくもの、つまり「フード(物)を売る店」から「ミール(食)を売る店」へと変化してきているのです。その社会的背景には、女性の社会進出や離婚率の上昇による男女共の単身者の増加、高齢化社会の進行などがあります。

HMRとは、文字通りホーム(家庭)のミール(食事)をリプレースメント(代行)する、つまり家庭で作る食事の代わりに持ち帰ってすぐに食べることのできる調理済み食品のことで、日本で言えばデパートの「惣菜」に似ています。調理する必要が無く、時間を節約できるということ、また単身者や高齢者にとって、ポンド(1ポンド=453c)やガロン(1ガロン=3.8g)単位でなく、好きなものを好きなだけ買えることもあり、急成長しています。

■ HMRに対応した店舗づくり

@ スーパーマーケットの中にイートイン(飲食)コーナーを設ける

最初に視察した高級スーパー「Fresh Field」では、購入した食材を店内で食べることができるイートインコーナーが設けられていました。これにより、いちいち職場や家まで持って帰る必要がなくなり、手軽に食事を済ますことが出来ます。

A 持ち帰り「盛りつけ惣菜」を増やす。

調理済惣菜等を容器に盛りつけて販売されています。皿に入れ直す必要がありません。

Bグルメ惣菜の「量り売り」コーナーを設ける

ガラスの陳列ケースに、いかにも食欲をそそる惣菜が数多く販売されています。またどの店にも量り売りのサラダバーが人気を集めていました。

今や、アメリカンスタイルの食生活=ステーキという時代ではありません。健康志向が高まり、チキンや魚介、野菜、穀物などのメニューをバランスよくとるという、よりヘルシー感覚の食事への傾向が移ってきています。食生活を考える上で、96%がヘルシーな食品、または食事が重要と考えているというアンケート結果もあるほどです。

実際、牛肉よりもチキンのコーナーが充実していましたし、ノンファット(動物性油脂不使用)、オーガニック(有機商品)などの商品も目立ちました。オリーブオイルに含まれるオレイン酸や、緑黄色野菜のβカロチンなどの効用が主婦層にも浸透し、ノンファット・ローカロりーなどの“レス”のメニュ−と共に“モア”の商品も多くなっています。

■ 最後に

たしかに、日本とアメリカは文化や生活習慣、商業習慣、規制や地価などの経営条件などの違いはあるでしょう。しかし、真の顧客志向を貫き、時代の変化のスピードに適合した「顧客に卒業されない」企業のみが生き残れるという原則は共通していることを感じました。

「コーヒーを飲みながら“座り読み”OK」の書店 バーンズ&ノーブル

バーンズ&ノーブルは、全米ナンバーワンの書籍販売のカテゴリーキラーです。

ニューヨークサードアベニューのスーパーストア(大型店)へ入ってみました。入口を入ると窓際がゆったりとした喫茶コーナーになっていて、コーヒーのいい香りがしてきます。その横の雑誌コーナーにはカゴが置いてあり、そこに何冊も雑誌を入れて喫茶コーナーに持ち込んでコーヒーを飲みながら自由に読んでいることにまず驚かされます。

そして正面の売場では、新刊書やベストセラーが10〜30%引きで売られています。アメリカには日本のような再販売価格維持制度(定価販売規制)は存在しません。

 また、日本の東販・日販のような取次店も無いため、仕入れ価格や販売価格、返品の条件などは書店と出版社の力関係で決まります。そうなると規模が大きく力のある書店は大量に安く仕入れることで、値引き率を上げることが出来ることになります。また、平均五〇〇〇平方メートルで15万冊という圧倒的な品揃え、座り読みOKを始め本に関する知識が豊富で親切なスタッフの育成や「ダイレクトメール販売」「インターネット販売」など様々な顧客サービスなどで、アメリカの書店業界では大手資本の寡占化が進んでいます。全米書籍販売協会(ABA)の調査では、「バーンズ&ノーブル」「ボーダーズ」「クラウン・ブックス」「ブックスアミリオン」の大手4社だけでシェアは4割を越えています。(注3)

店内を歩いていると、なにか不思議な感覚におそわれてきます。ベージュや茶など落ち着いた色調を基本に木質系の素材を多用した店内、書棚の周りの至るところに置いてあるソファーや椅子、そこに腰掛けてゆったりと読みたい本を読んでいる人。2階の専門書コーナーでは、ハードカバーの専門書を渦高く積み上げ、ノートにメモしながら本を読んでいます。「なんだこれは図書館じゃないのか?」誰でも考えてしまう疑問が沸いてきます。「これで商売が成り立つの?」

■ 明確な差別化戦略としての業態表現

アメリカでは、ショートタイムショッピングの販売形態としてインターネットの書籍販売が急成長しています。探している本や知らない本の検索は、自宅やオフィスでパソコン画面上で効率よく探すことが出来るのです。

一方、本好きの人にとって、書店で本を購入することの満足は、ショートタイムショッピングだけではありません。むしろたくさんの本の中から、興味のある分野や作家の書物を発見したり、知らなかった本をパラパラと見ているうちに興味がわいてきたりという「出会いと発見」があることが、わざわざ書店に足を運ぶ理由であり、楽しみです。

そう考えると実は、座り読み歓迎のソファーやコーヒーショップの併設などは、書籍販売を単なる“買いやすさ”という利便性の追求から、本好きな顧客に対する「出会いと発見」「知的興奮を伴う楽しみ」の場の提供という業態に深化させたバーンズ&ノーブルの表現技術だということに気づきます。

また、帰国後発売された本にこんな興味深い記述がありました。

「万が一、コーヒーで本が汚れたら弁償してもらうか、ですって?とんでもない。かわりに新しい本をすぐにお持ちします。」こう笑われてしまった。全部読まれたら商売にならないではないか、とたたみかけると「書店で一冊読破されるほど本がお好きな方なら、他に何冊か買っていかれるはずですよ」とあっさり言われてしまった。価格の安さもさることながら徹底したサービスによる顧客満足の向上こそ厳しい競争に生き抜く秘策、という哲学が感じられる体験だった。

「アメリカ量販店が日本を襲う」(西村 晃著 PHP研究所刊)

日本でも最近座り読みOKの店も出来てきています。大阪難波Jもそのひとつです。ちょっと立ち寄ってみました。たしかに椅子が置いてあり、お客さんが本や雑誌を読んでいます。私も本を3冊程持って椅子を探しました。「空いてない!」満席。そう、圧倒的に椅子の数が少ないのです。  

平日の昼という比較的空いている時でこれだから、休日や夕方ならと考えてしまいます。さらに座り読みコーナーにはこんな注意書きがありました。「本は商品ですので、書き込みなどはしないで下さい。またメモを取ることもご遠慮下さい」

日本ではまだ慣れていないので、テストケースとしてこういったことも仕方ないのかもしれませんが…。

注3 日経流通新聞(98・3/24)の報道によると、全米書籍販売業協会(ABA)は、独立系書店二十四社を代表し、バーンズ&ノーブルとボーダーズの二社が反トラスト法(ロビンソン・パットマン法)に抵触する営業行為(出版社に対して書籍の卸売価格の大幅な値下げを要求)をしているとして、両社をカリフォルニア州北部地区裁判所に提訴している。

バーンズ&ノーブルは、「業界慣行に従っており、法に抵触するような行為はしていない」とコメントを発表した。

ベッド・バス&ビヨンド

今、アメリカで活況を呈し、これからも大きな成長が期待される分野にホームファニシング市場(※注2)があります。これは、カーテン・カーペット・寝具・タオル類などのインテリア関連商品をカラーコーディネートしながら購入できる店舗のことを言います。

アメリカの景気回復により、雇用状況が好転したことで、消費者が家を買い始めたりして、住関連商品が売れ出したこと、ベビーブーマーが中年期に入り、nesting(巣作り)を考え始めたことなどを背景にしています。アメリカのホームファニシング市場は6兆円〜8兆円と言われていますが、この市場をリードする企業が、今回視察した「ベッド・バス&ビヨンド」です。その名の通り、ベッド(寝室)とバスルーム(洗面・浴室・トイレ)のビヨンド(関連商品)を扱う店で、「充実した顧客サービス」「快適な買物環境」「バラエティー豊かな品揃え」「エブリデー・ロープライス」を四本の柱とした画期的な新業態店舗です。店舗の大型化により、食卓関連、キッチン用品、収納用品など、商品カテゴリーの拡大が見られます。ここ数年30〜40%の割合で業績がアップしています。

今回視察したマンハッタン店は、1991年に再開発の遅れていた6番街の19丁目にオープンしました。コストの高いアーバン・エリアは低価格販売を行う「価格訴求型」の小売業にとって鬼門とされていましたが、その“常識”をみごとに覆したことで有名です。その後この界隈は、「バーンズ&ノーブル」(書籍・CD)「ステーブルズ」(文具・オフィス用品)「トゥディズ・マン」(紳士服のオフプライスストア)などが次々にオープン。寂れた地区が人気のある小売店舗の集まるショッピングエリアに変貌しています。

一歩店内に入ると、天井高7mを越える店舗空間と圧倒的な商品量に驚かされます。特にマンハッタン店は、8000m(平均2800〜4800m)という広い店内に3〜4万アイテムの商品が陳列されています。

■ ベッド・バス&ビヨンドの成長要因

1.エブリデー・ロープライス政策を実現するための「ローコストオペレーション」 商品は納入業者から店舗へ直接配送、ウォールディスプレイ(店舗内の背の高い什器に陳列された状態での在庫)することで、倉庫と配送センターの経費を削減。広告もほとんど行っていません。

2.バラエティー豊かな品揃え 例えば、まな板は、3.99$から29.99$までなんと50アイテムもありますし、ハンガーも、プラスチック・木製・サテン・金属製など壁一面に展示されています。タオルもたてに色が統一され、天井まで高く積み上げられています。

3.ワンスストップショッピング性 ここだけで、必要なものがなんでも揃っていて、前述の品揃えと併せて、他の店で探すことがまったく必要ないと顧客に感じさせます。

4.ディセントラライゼーション(集中管理排除) 店長のジョエル・シェア氏によると、「ストアマネージャーや部門責任者に、品揃えやディスプレイに関する意志決定権を与えており、このシステムによって、各店舗では、地域のニーズに即対応できるフレキシブルな体制が整えられている」

5.顧客サービス
@ブライダル・レジストリー 結婚を予定したカップルが、新生活に必要な品物をリストアップし、店に登録するシステムのことで、親戚や友達がお祝いの商品を買いに来ると、まだ購入していない商品を知らせてくれます。Aカスタマー・フレンドリー お年寄りや体の不自由な方のための電動カートが用意されていました。ちょっと一服できる「インストア・カフェ」もありました。私達の行った日は、平日の開店直後だったため店内は空いていましたが、休日は大変混雑するということで、レジ数も多く用意されています。また、マンハッタン内なら即日配達(有料)するというデリバリーサービスなど様々なサービスが実施されています。

※注2 ホーム・インプルーブメントの業態から専門分化したもので、住まいをより美しく、楽しく、便利にするために必要な器具、装飾品(家具、カーテン、カーペット、ベッドなど)を売る小売店のこと。

■ 急成長するカテゴリーキラー

カテゴリーキラーとは、日本でも有名になった『トイザらス』のように、特定の部門(category)で圧倒的な力を持ち、既存の企業を淘汰してしまうことから「殺し屋」(killer)と恐れられている業態のことを言います。

価格の安さと品揃えの豊富さ、そして個性豊かな店舗イメージは、顧客に新鮮さと驚きを与え、急成長を遂げています。

そして今、価格だけでない本格的な「顧客満足型サービス競争」激化の時代に入っています。(3社とも日本への進出を計画しています)

ホームデポ

ホームデポは、ホームインプルーブメント(補修・DIY=do it yourself 注1)市場で全米最大最強の企業です。

1997年度決算で、売上高前年比24%増の242億ドル、日本円でなんと3兆1400億円(130円換算)というウェアハウス(倉庫型)HC(ホームセンター)のチェーンストアです。

店内に一歩足を踏み入れると、天井高八bの広々とした売り場に、建築・設備資材、照明器具、塗装材料、園芸用品など、その商品量の多さに思わず息を飲むほどです。商品の搬入や搬出のためフォークリフトが動き回っており、店舗というより文字通りウエアハウス(倉庫)といった感じです。職人風のお客さんなどは、商品をリヤカーのような大きなカートに入れて運んでいます。

しかしホームデポの魅力は、その圧倒的な品揃えと徹底した低価格だけではありません。実は顧客のニーズに即応できるサービス体制にあるのです。

今回視察したニューヨークの店舗には午前9時前に到着したのですが、入口の営業時間を見るとAM7:00〜PM10:00となっています。なぜ朝7時開店なのか? ホームデポは、プロの職人などがその日の仕事の材料などを買いにくるためとのこと。

■ なぜ全米No1になれたのか

@画期的な業態開発 

アメリカでは、ブラックマンデー後、90年代に入っても景気が好転せず、建築業界においても住宅需要が激減し、大工職人など大量の失業者がうまれました。ホームデポでは、こうした大工職人などを売り場スタッフの「ホーマー」として大量に採用しました。彼らは、もともと職人であり経験も知識も豊富なので、店の品揃えに対してもアドバイスが出来るし、たとえ相手がプロの顧客だとしても相談に乗ることが出来ます。

この専任スタッフの配置と本格的なプロ対応の売り場とによって、一般客とプロの顧客両方に満足を与えることのできる画期的な店舗を作り上げたことが、他店との強力な差別化に繋がり、急速に売上げが拡大しました。

「顧客にとってエキサイティングで魅力ある店であり続けるために、業態コンセプトは常に進化を続けなければならない」(マーカス会長)

A集中管理排除

ホームデポでは、「管理された店にはダイナミズムがない」という考えから、独立採算方式の地域カンパニー制が採られています。

会社にとって管理しやすい店ではなく、現場で働く従業員が自分で考えて判断して行動することで、地域の顧客ニーズに応えるという「個店」の対応力を高めたことが成長の要因です。

また、社内提案制度なども活発で、そうした刺激が従業員の意欲や感度を高め、自己成長を促して、顧客へのサービスとして還元されています。

 こういった人間主義経営は、「マニュアル化による標準化」といった従来のチェーンストア理論をくつがえすものでした。

「240億ドルもの売上げは、起業家精神をもつ大勢の人間が集まっていないと達成できない。その起業家精神を育て、結束させるのが私達の仕事だ」(同会長)

■ 拡大するBIY市場

HCはもともとアメリカにおいて、素人が「自分の家は自分で建てる」というDIYブームに対応して「家を一軒建てるために必要な材料・道具がワンストップショッピングできる場」に整っていったのが業態成立の始まりである。しかし現在、アメリカでは、「すべて自分でやる」というDIYは減って、「材料や部品は自分で買って取り付けはプロに頼む」というBuy it Yourself(BIY)市場が拡大しています。

そこでホームデポでは、信頼のおける施工業者と提携して、取り付けサービスを希望する顧客に対応しています。「それでも他店で同じ商品を買うぐらいの値段で済む」と大変好評です。

今日本では、例えば家をリフォームする場合、工務店等の専門業者に任せるか、すべて自分でやるかしか方法はありません。そんな中でホームデポのような業態が市場に進出するとどうなるか? 

まず第一に、今まで一般消費者が知らされていなかった建築用資材や用品の業務用価格の情報が開示されることになります。第二に店内のプロのアドバイスや良心的で信頼できる提携業者との工事契約により、これまでとかく一般消費者にとって不明瞭だった建築工事の価格体系が透明になります。モノの流れが間接的で価格が見えない構造が打破されることになるでしょう。

■ホームデポエキスポの展開

BIY市場の拡大に伴い、消費者は構造や機能面より内装や装飾といったデザイン面を重視するようになってきました。

そこでホームデポでは、九四年から、デザインをコンセプトに、バス&キッチン分野に特化し、アップスケール化をはかったホームデポエキスポデザインセンターを展開しています。DIY専門の店舗ではなく、店内にキッチンからバスルームまでの様々なモデルルームを設けたほか、インテリアデザイナーを常駐させ相談に応じています。二〇〇〇年までに全米で二百店を出店させる計画です。

こうした消費者の志向は後述の「ベッドバス&ビヨンド」をはじめとするホームファッションストアの急成長の要因にもなっています。

こう見てきますと、「顧客満足の向上」を掲げたホームデポのような新業態店の進出で影響を受けるのは、何も他のホームセンターなどの小売業だけでなく、実は建築業界なのだと言えるでしょう。 

※注1 do it yourselfで住居空間をより良くするために必要な建材・建具・家具・工具の素材や部品を売っている小売店のこと。最近はホーム・インプルーブメントから専門化したホーム・ファニシングやホーム・デコレーティングストアなども急成長している。

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視察日程表

視察日程表
地 名
時刻
交通機関 摘 要 食事
1 関西空港発


ミネアポリス着
14:10


11:45
NW024


専用車

空路、直行便にてミネアポリスへ。
入国手続き
市内視察後ホテルへ。

(セントポールエアポートヒルトン泊)

昼食

夕食

2

ミネアポリス発
ニューヨーク着

14:45
18:29

NW352

モール・オブ・アメリカ

(パークセントラルホテル泊)

朝食
×
夕食

3

ニューヨーク

11:00

専用車

ジェトロ訪問セミナー
ベッドバスアンドビョンド訪問シュワルツ津、ウッドベリーコモン、ホームデポ

(パークセントラルホテル泊)

朝食

昼食

×

4

ニューヨーク

 

専用車

自由の女神
エンパイヤーステイトビル、ニューヨーク証券取引所
SOHOの視察

 (パークセントラルホテル泊)

朝食

昼食

×

5

ニューヨーク発

ワシントン着

 

専用車
アムトラック

専用車にて駅へ。

到着後ワシントン市内視察。

(シェラトンワシントンホテル泊)

朝食

昼食

×

6

ワシントン

 

専用車

終日ワシントン市内視察、国防総省(ペンタゴン)、ホワイトハウス

FBI、議会図書館、古文書館、スミソニアン博物館など。

(シェラトンワシントンホテル泊)

朝食

昼食

×

7

ワシントン発
ミネアポリス着
ミネアポリス発

08:30

10:09

11:35

専用車

NW621

NW023

一路帰国の途へ。

朝食
8
関西空港着
14:40
入国手続き後、解散。    

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